はとぽっぽ・・・

こんな場面に遭遇した・・・

 

「鳩の事故」

 

マナーの悪いドライバーが、道路上にいた数羽の鳩に突っ込んだ結果の出来事。

その内の一羽が逃げ遅れ、最悪の結末は免れたものの、ある意味”命”の羽を怪我したようで

片方の羽はダラリと痛々しく、少し血も出ていた。

 

空に生きる鳥にとって致命的な怪我。

処置をしなければ、結果的に死は免れない。

 

何も出来ないながらも、数メートル先にいる飛べなくなった鳩を

このまま見過ごすのは・・・と、色んな感情が入り混じる。

 

そんな中、モタモタと何を悩んでいるかも分からない私の横を

制服を着た、園児が駆け抜けていった。

 

「お母さん!鳩生きているよ!!」・・・と。

 

この子もどうやら目撃していたようだ。

その子は鳩を躊躇うことなく抱き抱え、母親の所に走っていった。

 

「ほら、鳩生きてる。痛そうだよ。」

 

何とも情けない自分に苛立ちながらも、心優しいこの園児の行動に

嬉しさのようなものも感じた。

 

しかし、次の瞬間この子の母親から出た言葉はたった一言・・・

 

 

「捨ててきなさい!」だった。

 

 

確かに、野生の動物はウィルスなどを持っているかもしれない・・・。

どこか汚い場所も歩いていたかもしれない・・・。

もしかしたらこの母親は、鳩=鳥=鳥インフルエンザという連想のもと、

瞬間的に出た”我が子を守るべくして出た言葉”なのかもしれない。

 

色んな事情だってあるだろう。

 

「命を育てる」・「命を守る」・・・これらは想像以上に大変な事であり、大切な事だと思う。

キレイごとではない覚悟のモト、我が子を守っているこの母親に意見など私は出来ないが

この園児はどう感じたのだろうか。

 

少なくとも鳩を”命”と思っているからこその行動だったと思う。

 

助けたから”善”、助けなかったから”悪”という単純なものではないのはわかる。

しかし、目の前の命を「捨てる」と言われたこの子はどう感じるものか。

 

大人の複雑な事情や、感情までは理解できるとは思えない。

 

この少なくとも”純粋”な男の子は大泣きしていた。

理由もよく分からず、引きはさなれそうな鳩を抱えて。

 

様々なことを考えさせられる現場となった。

 

私は幼少時、世田谷公園でよく鳩に餌をあげていた。

とてつもない数の鳩が私を囲い、全身鳩まみれみたいなこともあった。

 

時代も違えば、環境も人それぞれで、比較にも参考にもならないのだが

この泣いている子を見て、複雑な思いになった。

 

そしてこの”鳩の現場”にはもう少し続きがある。

 

男の子の泣き声でか、偶然か一人のおじいさんがどこからかやってきた。

明らかに慣れた手つきで鳩を抱きかかえ言った・・・

 

「鳩は強いから大丈夫!」

 

鳩の救世主なのか、園児の救世主なのか・・・ヒーローの出現。

園児はにっこりと”おじいさんヒーロー”に全てを託し、安心した風に見えた。

 

そして「治してあげるから大丈夫だよ!」と言って、さら~と”ヒーロー”は居なくなった。

 

 

カッコいい・・・鳩も園児も救ってしまった。

 

 

 正に”ヒーロー”だ。

 

 

「捨てる」と言った大人・・・。「治す」と言った大人・・・。

ただ見ていただけで終わった私(大人)。

 

この子には改めてどう映ったのか・・・内容の濃い数分間だった。